がん薬物治療とは抗がん剤、つまり殺細胞性抗がん剤、分子標的薬、ホルモン剤、免疫賦活剤の4つに分けられる薬物による治療の総称です。それぞれの特徴、副作用などについては次回以降の記事で詳しく説明していきたいと思いますが、これらの薬剤を組み合わせ、使い分けながら治療が行われていきます。

がん薬物治療は目的を明確にして行うことが大切です。それは薬物療法単独あるいは併用によって治癒が望める状況なのか、あるいは症状緩和や延命が目的なのかによって治療への臨み方が全く変わってくるからです。急性白血病、悪性リンパ腫、精巣腫瘍、絨毛がんなどの腫瘍は薬物療法のみで完全治癒が狙えます。これらの治療目的はがんの根治とすることが一般的であることから副作用が多少きつく現れたとしても、可能な限り治療の手は緩めずに実施されるべきとされています。

また、手術の前にがんを小さくすることで切除しやすくすることや臓器機能を温存することを目的とした術前補助化学療法や切除した後に目に見えない小さながん細胞を制御することで再発の可能性を抑える術後補助化学療法という方法もあります。これらも同様にがんの完全治癒を目指すことが第一となるため規定の治療スケジュールを完遂することが大切です。

一方で多くの進行・再発期固形腫瘍では薬物療法単独による根治は不可能であり、延命・症状緩和、生活の質の維持が目的となるため、強い副作用はなるべく避けるべきであり、薬剤投与量の減量が優先されることも多くあります。

この他にも腫瘍に対して直接薬剤を投与する膀胱内注入療法や、肝動脈化学塞栓療法などがあります。やはり、これらも治癒を目的としたものなのか、延命を目的としたものなのかということを明確にして副作用と生活とのバランスを考えていくことが大切です。

患者さんのなかには抗がん剤の減量や投与予定日の延期を非常に嫌う人もいらっしゃいますが、こういった背景を患者さんご本人に理解していただくことが最適な治療の第一歩だと私は考えています。残念ながら現時点ではいくら手を尽くしても数ヶ月の予後延長しか望めないケースもあります。強い副作用を必死で耐えたとしても、それで伸びた数ヶ月の予後がほとんど寝たきりで何もできなかった、ということが必ずしも最適な医療ではないかもしれません。

治癒不可能ながんを宣告されたときにすぐ整理するのは難しい問題かもしれませんが、その治療でどれくらいの予後延長が期待できるのか、その期間にどんなことがしたいのか、ということを考え合えての無治療ということも含めた最適な判断を患者さん・ご家族が医療者とともに下せることが非常に大切なことではないでしょうか。

薬剤師
深井

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