■モルヒネはあくまで痛み止め

 「がんの痛みが少し強いようなので、モルヒネを使いましょうか。」

私がお薬のお話をするとき、こう言われて顔が真っ青になっている患者さんがいらっしゃいます。

 「もう治療法はないということですか?」
 「命を削ってまでそんな恐ろしい薬、使いたくないです。」
 「中毒になったり錯乱して、家族に迷惑はかけないだろうか。」

みなさん、さまざまな不安を訴えられます。私がこういった不安を抱く患者さんやご家族にまず伝えたいことは「モルヒネはあくまで痛み止めであって、それ以上でもそれ以下でもない。」ということです。対症療法なので、がんそのものの治療とは別の軸で考えるもので、余命を縮めるようなことはありません。それどころか、適切に痛みやつらさの治療を行うことで余命が伸びたという報告もあります。

■モルヒネは中毒にならない

モルヒネに代表される麻薬性鎮痛薬(他にはオキシコドン、フェンタニル、ヒドロモルフォン、タペンタドールなど)は、中枢神経に作用して痛みを取ります。痛みにさいなまれている人の脳内では、モルヒネは痛みを除去するために消費され、依存症は形成されないことが明らかになっています。つまり、痛みに対して適正に使われる医療用麻薬には中毒になる心配はないということです。

ただ、副作用として便秘、初期の眠気・吐き気などが現れることがありますが、これらも適切な対処で制御することが可能です。

■我慢しないで、その痛みを教えてください

がんをり患された人のうち、70−80%はなんらかの「がん疼痛」を経験します。痛みの原因となるのは、組織へのがん浸潤による神経の刺激、腫瘍の増大による直接圧迫などによって起こると言われていて、この痛みのほとんどは治療できるものと言われています。

痛みは誰に対しても平等につらいものです。どんな人でも痛みがあると毎日の生活に支障をきたしたり、精神的に落ち込んでしまったり、自分らしく過ごすことが困難になってしまうでしょう。がんの痛みを我慢せずに治療することは日々を有意義に過ごすために大事なことです。日本人は我慢を美徳とするような価値観もあり、一人でじっと耐えている人もいらっしゃいます。

より良い疼痛緩和は医療者と患者さんの共同作業です。もし何か心配を抱えている場合、医療者とそれを話し合い、良い治療に臨まれることをお勧めいたします。

薬剤師
深井

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