前回からの続き

あなたは、がんがもたらす、こうした「揺さぶり」を完全に無視して生きることはできません。一時的に感じないようにしたり、あたかも問題が存在しないかのようにふるまったりすることはできるかもしれませんが、それができる期間は限られています。なぜなら、根治が狙えるにせよ、狙えないにせよ治療を始める時期をいつまでも先に伸ばすわけにはいかないからです。

幸いにもあなたのがんが初期のもので、明確に根治可能だった場合、がんによる「揺さぶり」は比較的限定的なものにもなりえます。それでも、治療が終了するまでの間、療養に専念するための環境を用意する必要が出てきます。

仕事をしている人なら、病気休暇を申請する必要があるかもしれません。あなたが病気休暇の制度がない雇用条件で働いているのならば、仕事を失ってしまう可能性もあるでしょう。また、治療によって低下した体力で復帰が可能かどうかも心配になるかもしれません。

子育てや親の介護をしている人ならば、あなたに代わって手伝ってくれる人を確保する必要が出てきます。頼れる縁者が少なかったり、いなかったりする場合は、このことが大きな問題となるかもしれません。

あなた自身が一人暮らしで、周囲の援助が期待できない場合、孤独感や不安、現実的な不便と向き合う必要が出てきます。

あなたの収入が途絶えたり、少なくなったりすれば、金銭面の不安を抱えることになるかもしれません。治療費自体も保険診療とはいえ、それなりの額になるはずです。

根治可能と分かっていて、療養の期間が明確に予測できた場合でも、これだけの問題が生じえます。がんの診断を受けたことによるショックが回復しないうちから、こうした現実的な問題が次々にあなたを揺さぶるのです。がんの治療自体よりも、こうした社会的な対処のほうに多くのエネルギーを費やさなければならないことも多いかもしれません。

つづく

総合内科専門医/臨床心理士
飯島 慶郎

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