前回からの続き
ピアならではの「体験の共有」とは、具体的にどのようなことでしょうか。以下に
一例を挙げてみます。

がんの診断をうけた人は、しばらくの間「頭が真っ白になって何も考えられない、
何をどうすればよいのかわからない」状態になることがあるといいます。医師から
今後の治療法などについて説明を受け、治療に取り組む環境を整えなければなりま
せんが、こうした状況では理性的に行動するだけでも精いっぱいでしょう。前述し
たようにがんに強く「揺さぶられて」いるわけです。日常生活そのもの、仕事のこ
と、家族のこと、経済的なこと、将来設計の見直しなど、一気に多方面への対応を
迫られて混乱してしまうのです。

世界中が普通に動いているのに、突然世界から切り離され、自分の時間だけが止ま
ってしまったかのように感じたりするかもしれません。また、当然のことながら、
あなたが接するほとんどの人(家族、親せき、医療者、職場関係者)は「がん患者
ではない」ことにあらためて気づき、自分の周辺において現在進行形でがんと向き
合っているのは、自分だけであると悟るかもしれません。実際、あなたが自分のが
んを打ち明けたとたんに気まずそうにして、よそよそしくなる人もいるでしょう。
また、世界に一人だけ、自分だけが特殊な存在であるかのように感じてしまうこと
もあるかもしれません。こうした状況は言いようもない激しい孤独感をあなたにも
たらすでしょう。

もしこの時、自分と同じような体験をしたことのある人が近くにいて、あなたを支
えてくれたらどんなにか救われることでしょう。そう、ピアサポーターは、そうし
たことをすでに体験しているのです。ピアがあなたに「私もしばらくは混乱して、
何も手につきませんでしたよ」と声をかけてくれたとしたら、あなたは「自分は一
人ではないのだ」と感じ、孤独感が和らぐことでしょう。これが「体験を共有する
」ことによるいやしです。
つづく

医師 総合診療医/心療内科医/漢方医/産業医
飯島 慶郎(いいじま よしろう)

臨床心理士/産業カウンセラー/認定産業医
総合内科専門医/家庭医療専門医/東洋医学会認定医

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