前回からの続き
ピアサポートという言葉が出てきました。ここで再び脱線して、ピアサポートの概念や意
義について考えてみましょう。先述しましたが、ピア(peer)とは同じ立場にある仲間のこ
とです。ピアサポートという言葉には、教育分野のものと医療福祉分野のものがありま
すが、ここでは後者の成り立ちについて触れていくこととしましょう。

医療福祉分野におけるピアサポートの源流は1970年代のアメリカにさかのぼるといわ
れます。障がいのため、人工呼吸器をつけながら生活していたカリフォルニア大学の学 
生が始めた自立生活運動(IL運動)が発端とされています。当時の欧米の医療、福祉
や障がい者支援の世界においては、援助の目標が「障がい者が、他者の世話を受け
ずに自分で生活できること」におかれていたといいます。

しかし、この目標は人工呼吸器を使用しながら大学生活を送っていたエド・ロバーツに
は到達不可能なものでした。同じように、生涯服薬を含めたサポートを受け続ける必要
のある精神障がい者や重い病気を持った人は「自立」していない人々とみなされていた
のです。

これに対して、IL運動のスローガンとして掲げられたのが「人の助けを借りて15分で衣
服を着て仕事に出かけられる障がい者は、自分で衣服を着るのに2時間かかるので
家にいるしかない障がい者より『自立』している」というものでした。つまり、「自立」
とは単に「人の助けからの離脱」を意味するのではなく、「人の助けを借りて、より自分
らしくある能力」も積極的に含む概念であるべきだという主張です。

つづく

医師 総合診療医/心療内科医/漢方医/産業医
飯島 慶郎(いいじま よしろう)

臨床心理士/産業カウンセラー/認定産業医
総合内科専門医/家庭医療専門医/東洋医学会認定医

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