今回は、前立腺がんが見つかった後にどうやって治療するのかについてお話したいと思います。
がんの治療における三本柱は、手術・放射線・化学療法(抗がん剤治療)です。通常はこれら
の中から選ぶか組み合わせて治療を行いますが、前立腺がんの場合は、ホルモン療法とい
うものがあります。これは、前立腺が男性ホルモンによって制御される臓器であるためであり
、女性でいえば乳がんにホルモン療法を用いるのと同じことです。

これらの治療法の中で、どの方法を選択するか、どれを組み合わせるかといったことは、がん
の進行具合である病期(ステージ)や、年齢、合併症、本人の希望などにより選択されます。
前立腺がんの病期はⅠからⅣまであります。わかりやすく説明すると、ⅠとⅡは、がんが前
立腺の中にとどまっている段階。Ⅲになると多少前立腺からはみだしている段階。Ⅳになると
転移しているか、前立腺の近くの臓器や組織にまで食い込んでいる段階です。

■局所にとどまっている前立腺がん
前立腺がんが局所にとどまっている場合、手術か放射線治療が行われます。がんがそこにし
かいないわけですから、物理的に除去するか、高い線量の放射線で治療してしまえば治るだ
ろうというシンプルな考え方です。

また、前立腺がん治療の特徴として、アクティブサーベイランスという方法があります。これは
、「がんは確かにあるものの、経過をみる」という方法です。

前立腺がんは非常に多い病気で、高齢男性に手当たり次第に生検をすれば、何割かには見
つかります。しかし、中には「がんには違いないものの極めて進行が遅い」ケースがあります
。そうした前立腺がんにおいては、定期的なPSA検査や直腸診と、年1回程度の再生検を行
って、経過をみるということも選択肢として検討できることがあります。

よくあるケースとしては、「63歳で前立腺がんが見つかったけど、会社で重要な仕事を任され
ており、あと2年は手術や放射線治療で仕事をセーブしたくない」という場合です。また、アクテ
ィブサーベイランスとはやや異なりますが、「前立腺がんって言われたけど、もう90歳だから治
療はしません」といって経過をみる場合もあります。

■外にはみ出している前立腺がんの治療
この段階は、症例に応じて大きく方針が異なります。
前立腺の外にはみ出している場合でも、手術や放射線治療が行われることはあります。膀胱
まで浸潤している場合は基本的には手術不能と判断してホルモン療法を行うことが一般的で
はありますが、膀胱ごと手術でとって根治を目指す場合もあります。
また、あまり浸潤がひどくなると出血したり尿の流れを阻害したりすることもあり、そういう症状
のコントロールのために手術するという場合もあります。
放射線治療の場合には、ホルモン療法でまず前立腺がんを縮めてから、治療を行います。

■転移がある前立腺がんの治療
転移がある場合は、全身を治療しないといけないので、ほとんどの症例ではまずホルモン療
法が行われます。男性ホルモンを抑えることで前立腺がんの増殖を抑えるというもので、多く
の前立腺がんにおいて効果がみられます。
ホルモン療法の効果が悪い、またはしばらく効いていたものの効かなくなってきた場合は、ホ
ルモン療法の薬を変えるか、抗がん剤治療を行います。最近では、比較的早期に抗がん剤

治療を併用する場合もあります。
転移があっても原発巣の前立腺を手術でとったり放射線をかけたりした方がいいとする研究
結果もありますが、まだ結論は出ていません。

■まとめ
以上のように、前立腺がんの治療は選択肢が豊富であり、「がんがどこまで進んでいるか」と
、本人の状態に応じて個別に治療プランを考える必要があります。
「前立腺がんは進行が遅いから治療しなくてもよい」という意見もありますが、それは症例によ
って正しい場合もあれば、経過をみるのが非常に危険な場合もあるのです。よく主治医の先
生と相談して、最適な治療戦略を考えましょう。

医師 泌尿器科専門医/日本泌尿器科学会所属
鈴木

研究機関でがんの研究を行いつつ、在宅医療でがん患者さんの診療・お看取りなども行っています。

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