もし、セラピストが「あなたが適応的でない自動思考行っている」と判断したときは、そう
した自動思考を引き起こす適応的でない認知を自覚するように勧めることでしょう。
具体的には以下のようなやり取りが行われるのではないでしょうか。例示してみましょう。

Th:セラピスト Cl:クライエント

Th:「がんの治療をしながら働くことができると、主治医も周囲も言っているのに、そうな
さろうとしないのはなぜですか?」
Cl:「なぜって… だってそんなの聞いたことないですよ?」
Th:「しかし、実際には可能な環境があるのですよね。なにが引っ掛かっているのですか
?」
Cl:「わたしが治療を受けながら仕事をするのは、迷惑になりますよ」
Th:「誰からか、そういわれたのですか?」
Cl:「いえ、そんなことはないんですが… 職場に迷惑をかけたくないので…」
Th:「職場では人手が余っているんですか?」
Cl:「いえ、むしろ人手が全然足りず、アルバイトもかき集めている状態です」
Th:「○○さんの労働力もあてにされているのではないですか?」
Cl:「はい、それはそうだと思います」
Th:「治療を続けながら働くことの、どのあたりが職場にとって迷惑になりますか?」
Cl:「…たしかに、病院に通院する日は決まっていますし、体調の悪い日には休んでもい
いといわれてますし…」
Th:「なるほど」
Cl:「だけど、完全に仕事に集中できる状態でないのです。それって迷惑ですよね」
Th:「誰かがそういったのですか?」
Cl:「…、いえ、誰も…」
Th:「おそらく、『仕事には完全な状態で全力投球しなければならない』というスキーマが
○○さんの中にあるのではないでしょうか?」
Cl:「…、そういえば…、そうなの…かも…」
Th:「こうしたスキーマが○○さんに、『適応的でない』自動思考を起こしているとは考え

られませんか?」
Cl:「…」
Th:「仕事には、『必ず』『全力投球しなければならない』のでしょうか?」
Cl:「確かに…、必ずしもそうとは言えませんね…」

つづく

医師 総合診療医/心療内科医/漢方医/産業医
飯島 慶郎(いいじま よしろう)

臨床心理士/産業カウンセラー/認定産業医
総合内科専門医/家庭医療専門医/東洋医学会認定医

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