はじめまして。産婦人科の野嶋です。これからしばらく「女性の健康」について、皆さん
と一緒に考えていきたいと思います。
インターネットがこれだけ普及した現代では、玉石混交、多種多様な情報が巷(ちまた)
にあふれています。そのなかから正しい情報、自分に本当に必要な情報を探し出すのは容
易なことではありません。特に医療や健康に関する情報に関しては、やはりある程度の専
門的知識がなければ、どうしても自分に都合のいい情報だけを信じたり、頼りにしたりす
る傾向があります。

この記事では、私のこれまでの医師としての経験や日々学んできたことをもとに、皆さん
が健康で快適な生活を送れるように、少しでも有益な情報がご提供できたらと考えていま
す。特に、あまり知られていない情報、間違って伝えられることが多い情報、勘違いや誤
解を招きやすい情報に力を入れてお届けしたいと思っています。また、よく知られた情報
についても、ざっくり要点がわかりやすいようにまとめてお届けできればと思っています。

さて、次回は、日本人女性の「11人に1人」がかかるといわれている「乳がん」について
、みなさんが気になる「その真実」をお話ししていきたいと思います。

■乳がんってどんな病気?

1.日本人女性の「11人に1人」がかかるがん
現在、日本人女性の約11人に1人が乳がんにかかるといわれています。そしてこの割合
は年々増加しています。乳がんは、女性が一生のうちでいちばんかかりやすいがんです。
乳がんで亡くなる人は毎年14,000人以上で、この数字はここおよそ50年で、なん
と8倍近くに増えています。

2.なぜ最近日本人に乳がんが増えているの?
最近日本人の乳がんが急激に増えています。なぜなのでしょうか?
乳がんはもともと、欧米に多いがんです。昔は日本人の乳がんはそれほど多くありません
でした。ところが、食生活が欧米化して、日本人が高脂肪・高タンパクの食事を取るよう
になって、日本人の乳がんが急激に増えてきたと言われています。

これは、食事自体の問題というよりも、食生活の変化によって体格の変化、とりわけ身長
が高くなったことと関係があると言われています。また、栄養が豊富になり、女性ホルモ
ンであるエストロゲンの分泌が豊富になったことや初潮が早くなったこととも関係がある
かもしれません。しかしながら、いちばんの原因は「少子化」にあるのではないかと言わ
れています。

女性にとって、妊娠・出産と授乳は、乳がんを予防する大きな要因になります(詳しくは
別の機会にお話します)。ところが近年、日本人女性の妊娠・出産・授乳回数が減少、あ
るいは高年齢化してきたことが、日本人女性に乳がんが急増してきた最も大きな原因では
ないかと考えられているのです。

3.乳がんの死亡数が増えているのは日本人だけ?!
先に述べたように、乳がんはもともと、日本人より欧米人に多いがんです。ところが、そ
の欧米ではすでに乳がんで死亡する人の数はここ30年以上大きく減り続けているのです。
それなのに、なぜ日本では乳がんで亡くなる人の数が8倍にも増え続けているでしょうか?

答えは簡単です。日本は乳がん検診を受ける人が少ないからです。
欧米での乳がん検診の受診率は、データ上では50〜70%以上(私の印象では
70〜80%くらい)、それに対して日本の乳がん検診の受診率はたったの20%です。

もちろん日本で乳がん自体が増えているということもありますが、それにしても最近の日
本の乳がん死の多さには目を覆いたくなるものがあります。乳がんは検診で早期発見が可
能で、しかも、早期発見できればほとんど死なずにすむがんです。次回はその辺りに焦点
を当ててお話したいと思います。

医師・産婦人科医 MPH
野嶋 優(のじま ゆう)

専門分野は不妊症・ピル・避妊・性感染症・子宮内膜症・LGBT・女性のメンタルヘルス・若年女性のがん(乳がん・子宮がん等)等。不妊症や各分野の臨床とともに、長年にわたって「若年女性のがん」(とくに遺伝・生活習慣と乳がん、HPV感染と子宮頸がん、若年女性のがん検診)の啓蒙活動に関わってきたので、その経験を生かしていろいろな切り口からご提供していきます。
ピル・性感染症・インフルエンザワクチン等に関する公的研究実績あり。2女の父。

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