前回は、喪失体験の後の悲しみには段階があるということと、第1段階の感情がまひしている段
階についてお話しました。今回は、第2段階と、第3段階についてお話します。

第2段階とは、「感情を表現する」段階です。喪失体験後のあわただしい雑務が終わった後、「悲し
い」「悔しい」などの激しい感情が湧きあがってきます。それは、これまでの人生で感じたことがな
いほどの強い感情・・・深い悲しみ、激しい怒りかもしれません。「こんなにつらい感情はないほう
がよい」と思われるかもしれません。この段階では、思う存分、泣く、叫ぶなどをして感情を表現す
ることをおすすめします。ひとりでゆっくりできる時間、空間を持ちましょう。

もし、「泣きたいはずなのに、涙がでてこない」、「どうやって表現して良いかわからない」という方
は、信頼できる友人あるいはカウンセラーのもとに出かけてみてください。

精神科で初めて診察する患者さんのなかには、医師が何も言わなくとも、ふっと涙を流す人が多く
いらっしゃいます。日常生活と離れた、秘密の守られる空間で安心感を感じられ、感情が湧きあが
ってきたのだと思います。その後、数分間涙を流しただけでも、「すっきりしました」とおっしゃって
帰って行かれます。カウンセラーや友人は精神科医の診察よりもずっと長く時間をとってくれるは
ずですので、その効果は計り知れないと思います。

感情を表現していった結果、第3段階の「憂鬱(ゆううつ)になり孤独を感じる」段階に入ります。も
し、第2段階で十分に感情を表現しなかった場合、第1段階の感情がまひした段階にとどまる、あ
るいは第3段階が長引くことになります。

第3段階では、「気分がうっそうとしている」「だれも自分のことをわかってくれない」「わたしは世界
で1番不幸なんだ」などの思いが湧いてきます。このときに忘れてならないのは、「いつか必ずこの
時期は過ぎさる」ということです。前回、「正常な」悲しみには10段階あるとお話ししました。必ず次
の段階にすすみ、悲しみを乗り越えられる時期がきます。

また、そんな状況にいる人を支えたいと思う周囲の人は、ずっとそばにいて、「必ずこの状態は過
ぎ去るよ」と言ってあげましょう。はじめのうちは、「放っておいて」「なにもわからないくせに」などと
言われるかもしれませんが、継続的にそばにいることで、好意を受け取ってもらえる日が必ず来ま
す。次回は、10段階のうちの、第4段階、第5段階についてお話します。

医師・精神科医
樋野 (ひの)
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