前回の記事で、がんの予防に適した食事は糖質制限食であることをお伝えしました。
これは、多くのがん細胞が、もっぱら炭水化物に含まれる糖質をエネルギーにして増殖する
性質を逆手に取って、がんの発生・増殖を防ぐ食事法です。

今回ご紹介する「ケトン食」は、糖質制限食よりも厳しく糖質をカットして、さらに良質な脂質を
摂取する「低糖質・高脂質」な食事です。この食事を続けていると、体の中でケトン体というエ
ネルギー物質がたくさん作られるようになり、がんの予防・治療に適した体の環境に整えるこ
とができます。

■ケトン食のメリット
ケトン食を取り入れることにより、以下のようなメリットがあることが、海外の研究によって明ら
かになっています。
・糖質(炭水化物)を摂らないので、血糖値を正常に保てる。
・血糖値が上がらないので、がんの栄養源が枯渇し、がんの発生・増殖を防げる
・ケトン食で血中に増えるケトン体自体に、抗がん作用がある
・化学療法や放射線治療などの標準治療とも併用可能(標準治療の効果を高めるとの報告も
あり)
・化学療法と併用することで、抗がん剤の副作用を和らげることができる

■ケトン食の実践方法
体内で十分なケトン体が作られるためには、以下のポイントが重要です。

・糖質制限はしっかりと行う

まず糖質制限食の基本をしっかり守りましょう。ダイエット目的の場合は、若干の糖質摂取は
許容範囲ですが、がんの予防・治療に際しては、糖質管理を徹底しましょう。わずかでも糖質
を摂ってしまうと、ケトン体の産生がストップしてしまいます。

・良質なオイルをたくさん摂る
ケトン体は、脂質を材料にして体の中でつくられるエネルギー物質です。ケトン体はがん細胞
以外の正常細胞の重要なエネルギー源になるので、良質なオイルをしっかり摂取してケトン
体を増やしましょう。おすすめなのはココナッツオイルに多く含まれる中鎖脂肪酸です。中鎖
脂肪酸は肝臓でスピーディーにケトン体に変えることができるので、ケトン食に最適です。

■世界的な研究で明らかにされるケトン食療法の可能性
がんに対するケトン食の効果は、海外および国内の臨床研究により、脳腫瘍(悪性グリオー
マ)に対する有効性をはじめ、進行性の肺がんや乳がんなどでも確認されています。さらにそ
の他のがんについても有効性を調べるため、現在アメリカやドイツを中心に新たな研究が行
われています。

医学博士・元医学研究者
榎本 蒼子

2009年 博士号(医学)を早期取得の上、京都府立医科大学大学院・医学研究科を卒業
2009年 (独)日本学術振興会・特別研究員PD (Postdoctoral fellow)
2011年 京都府立医科大学大学院・医学研究科・博士研究員
2011年 京都府立医科大学大学院・医学研究科 総合医療・医学教育学 助教
2015年 京都府立医科大学大学院・医学研究科を退職

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