■運動にはどのような効果があるのか?
今回は運動の生理学的な効果について解説していきます。若干、専門的な内容になってしま
いますが、運動の効果をしっかり理解することで、モチベーションの向上にもつながりますの
で、ぜひともご一読ください。

運動の主な効果は4つあります。
それぞれ、がんの予防や症状改善にとって、非常に重要なものです。

1)炎症の軽減
2)免疫機能の向上
3)インスリン感受性の向上
4)睡眠の質の向上

それでは、それぞれについて詳しく説明していきたいと思います。

1)炎症の軽減
慢性炎症という言葉を聞いたことがありますか?病気やけがなどが長期間に及ぶと、細胞か
らは炎症物質が分泌され続けます。すると体は炎症を改善させることを優先させ、DNAの修
復作業を一旦休止します。

DNAの修復が行われないと、がん細胞が発生するリスクが高くなります。従って、慢性炎症は
がんの発症リスクを高めることになります。しかし、運動することにより、炎症物質は軽減する
ことがわかっています 1 。

2)免疫機能の向上
免疫機能が向上すると、免疫細胞の働きが活発化します。がん細胞は毎日私たちの体のな
かで発生していますが、免疫細胞の攻撃によって排除されています。つまり、免疫細胞が正
常に機能していなければ、がん細胞は増殖していくことになります。
正常な免疫機能がいかにがんの予防に重要なことかがわかると思います。この免疫機能を
良好に保つ方法の一つが適度な運動となります(過剰な運動は免疫機能は低下させるという
報告があります)。

3)インスリン感受性の向上
甘いもの(糖質)を食べると膵臓からインスリンというホルモンが分泌されます。血中に溶けだ
した糖質(グルコース)は、インスリンの作用で体のさまざまな組織(筋肉や肝臓など)に運ば
れていきます。つまり、インスリンがなければ、糖質は吸収されなくなってしまいます(高血糖
症)。
インスリン感受性が高いというのは、インスリンの機能がしっかりと発揮されている状態のこと
を言います。逆にインスリン感受性が低いというのは、インスリンが分泌されていても、うまく
使われていない状態のことです。体にとって望ましいのは、前者のインスリン感受性が高い状
態です。
インスリン感受性が低い状態(高血糖症)はがんの発症リスクを高めると言われています 2 。従
って、運動によってインスリン感受性を高めておくことは、がんの予防にとって大切です。

4)睡眠の質の向上
がん患者の30%から50%が睡眠障害を訴えます。睡眠の質の低下は、慢性疲労やうつ、体の
痛みの増悪、認知能力の低下などを引き起こします。従って、がん患者にとって睡眠の質を
高めることは、非常に重要なことです。

なかなか寝付けない、夜中に何度も目が覚めてしまうという人の場合、自律神経のバランス
が崩れている(交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいっていない)可能性があります。運
動は自律神経のバランスを整え、睡眠の質を向上させる役割があります。

スポーツカイロプラクター・医学博士(スポーツ医学)
榊原 直樹

1992年東北大学(動物遺伝育種学専攻)を卒業後渡米。1997年にクリーブランドカイロプラクティックカレッジを卒業後、カリフォルニア州のDoctor of Chiropracticライセンスを取得。2006年にはトリノオリンピックにスポーツドクターとして帯同。2007年に帰国。現在は名古屋にて施術の傍ら講演、執筆、スポーツの世界大会帯同、スポーツ医学の研究などの活動をしている。日本スポーツ徒手医学協会(http://jamsm.org/)代表。元岐阜大学大学院医学系研究科非常勤講師。医学博士。

主な著作:触ってわかる美術解剖学(邦訳、2012)、人体デッサンのための美術解剖学ノート(邦訳、2014)、シェパードの人体ポーズと美術解剖学(邦訳、2017)
主な執筆論文;Influence of lumbopelbic stability on deadlift performance in competitive powerlifters. Naoki Sakakibara, Sohee Shin, Tsuneo Watanabe, and Toshio Matsuoka; SportLogia, 10(2), 89-95, 2014

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