これまで、診断のできるAIや脳とつながるコンピュータなど、SFの世界と見まごうような新技術を紹介してきましたが、今回の話題はその極めつけともいえる、DNA編集技術とAIのコラボレーションについてです。この応用範囲の拡大は、ありとあらゆる病気の治療や、果ては不老長寿まで可能とするのではないか、とまで目されています。そんな希望も恐怖ももたらすような技術について見ていきましょう。

CRISPR(クリスパー)の衝撃

では、何がそのような夢を現実のものとしようとしているのか?それは、CRISPR(クリスパー)と呼ばれる遺伝子編集技術です。これまでは、遺伝子組み換えとは、100万回に一度成功するか否かというほどの精度でしかなく、たとえば干ばつに強いイネを作ろうにも、何度も実験を繰り返さなければならず、途方もない時間がかかっていました。しかし、このクリスパーは、とても正確に狙った場所に遺伝子の変異を挿入できる技術であり、その正確さは専門家に言わせれば、高校生でも何週間かのトレーニングを受ければ使いこなせるほどの簡便さだということです。ゆえに「DNAのメス」とも形容されています。

当然このクリスパーは医療への応用が期待されており、GoogleやAmazonなどの世界的大企業も注目し、出資を行っています。こうしたIT企業はAIの研究も行い、データの分析を得意としていますから、医療のビッグデータから遺伝性の疾患の原因遺伝子をAIを用いて特定し、クリスパーを用いて遺伝子ごと変えて治療しようというプロジェクトを進めています。AIは、遺伝子技術を加速させるポテンシャルも秘めています。

不老長寿とデザイナーベビー

このクリスパーの登場から、人類の長年の夢であった不老長寿への期待が沸き起こりました。老化とは平たく言うと細胞の経年劣化であるため、それをクリスパーを用いて修繕すれば、再び若い体に戻れる、という期待です。また、ヒトの全遺伝情報(ゲノム)が解析されていることから、ある才能にかかわる遺伝子の領域などが特定されています。それゆえ、受精卵のころから遺伝子を操作し天才児を作る、いわゆるデザイナーベビーを作る技術もクリスパーにより期待されています。

しかし、これらは果たして本当にもろ手を挙げて喜ぶべきことなのでしょうか。ここまで来たら人間は、神の領域にまで踏み込んでいる、という自覚を持つべきなのかもしれません。ときに過ちを犯す人間がそれほどの存在となってもよいのかは、疑問視せざるを得ません。

次回は「医療とAIのコラボレーション―⑥AIの民主化」をテーマにお届けします。

医療者編集部
医療AIラボ
PAGE TOP