■がん細胞は糖質が大好物

がん細胞が好む栄養素があります。それは「糖質」です。
米、パン、麺類などの主食や、スイーツ、果物などに含まれる炭水化物には、多くの糖質が含
まれており、過剰に摂取すると、やがて糖尿病などの生活習慣病につながることはよく知られ
ています。でも糖質の過剰摂取が引き起こすのは、糖尿病だけではありません。がんも糖質
によって成長・増殖します。

がん細胞が糖質を大好物にしているのには理由があります。
正常な細胞は、主に脂肪酸、ケトン体、糖質などをミトコンドリア内で酸素と反応させてエネル
ギーに変えるのに対して、がん細胞は糖質しかエネルギー源として利用できないのです。こ
れは、がん細胞に正常なミトコンドリアが欠けているためで、がん細胞は糖質を「解糖系」とい
う通常とは異なるプロセスで分解し、エネルギーを得ています。

がん細胞がもっぱら糖質からエネルギーを得ていることは、1923年にワールブルク博士に
よって発見され、「ワールブルク効果」として知られています。

がん細胞の多くは、驚異的なスピードで増殖することができますが、それを可能にしているの
が、糖質を利用したがん細胞特有のエネルギー代謝のシステムなのです。
したがって、がんの治療中や、がんの発生・増殖を予防するための食事としては、がんのエネ
ルギー源になる糖質の摂取を避け、糖質制限を心がけることが重要です。また、正常な体組
織をつくり、体力を維持するために、タンパク質と脂質をしっかり食べることも大切です。

■がんの治療中や、がんの予防に適した糖質制限食の基本

・米、パン、麺類などの主食をやめる
・果物、スイーツ、ジュースなどをやめる
・タンパク質(肉類、魚類、卵、豆類など)をしっかり食べる
・脂質(バター、ココナッツオイル、動物由来の油など)をしっかり食べる

■糖質制限食の効果は、海外のがん研究で注目されはじめている

海外のがん研究では、この糖質を控えた食事が、がんの治療中の食事に適しており、がんの
標準治療の効果を高めることが確認されています。

低糖質な食事は、がんの細胞へのエネルギー供給を妨げるほか、インスリンや炎症性物質
など、がん細胞の増殖に関わる物質を減少させるので、複合的な効果が期待できます。現在
、国内でがんに対する糖質制限食の指導が受けられる医療機関はまだ限られていますが、
将来的にはより多くの医療機関へ普及するでしょう。

医学博士・元医学研究者
榎本 蒼子

2009年 博士号(医学)を早期取得の上、京都府立医科大学大学院・医学研究科を卒業
2009年 (独)日本学術振興会・特別研究員PD (Postdoctoral fellow)
2011年 京都府立医科大学大学院・医学研究科・博士研究員
2011年 京都府立医科大学大学院・医学研究科 総合医療・医学教育学 助教
2015年 京都府立医科大学大学院・医学研究科を退職

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