前回からの続き

ここまで紹介してきた自動思考の働きについてもう少し詳しくみていきましょう。
自動思考というのが具体的には何をしているのかというと、「目の前にある現実」
と「スキーマ」とよばれる(個人的)信念とを比較して、現在が快適と感じるべき
状況なのか、それとも不快と感じるべき状況なのかを瞬時に導き出し、相当する感
情を呼び起こすという役割をしているわけです。

スキーマとは例えば、「自分のことよりも、家族の都合を優先させるべきだ」とか
、「子供は人様に迷惑をかけないようきびしくしつけるべきだ」とか、「嫌なこと
があっても、感情的になってはいけない」とか、「大げさに喜ぶことは大人として
はしたないことだ」などなどです。

たいていの場合こうしたスキーマは「~すべきだ」とか「~してはいけない」とか
「~に違いない」とか、堅苦しい表現でできています。

これらは、あなたが生まれ持った性格傾向や成育環境(家庭、教育、文化、経験)
により形成されてきた、無意識下の道徳規範や信念ともいえます。こうしたスキー
マはあなたの心の中に、数え切れないほどたくさん存在しています。そして「ある
状況下」において、あなたがどういう感情を感じるのかということを、すべて前も
って決めているのです。

こうした心理学的な真実を目の当たりにすると、「一見自由にみえる人間というも
のは、いかに無意識に支配された不自由なものか」という哲学的な感慨を感じてし
まうのは筆者だけでしょうか。

認知療法では、クライエントの中にある自動思考やこれらのスキーマを明らかにす
ることで、本来は無意識的な「感情の発生」というものを意識下におくということ
を、まず目指すのです。

つづく

医師 総合診療医/心療内科医/漢方医/産業医
飯島 慶郎(いいじま よしろう)

臨床心理士/産業カウンセラー/認定産業医
総合内科専門医/家庭医療専門医/東洋医学会認定医

この執筆者の記事一覧

がんと診断されたあなたへ

PAGE TOP