日本だけでなく世界において、がんを克服すべく多くの研究が進められています。しかし、現時点でがんを完治できるような治療法はなく、ほとんどの治療法はがんだけでなく正常な細胞にも影響を与えてしまいます。今回紹介するのは、現在多くの期待が寄せられている新たながん治療法です。

■がん光免疫療法のメカニズムとは
アメリカで研究を行っている日本人が開発した新たながん治療法は、「がん光免疫療法」とよばれています。がん光免疫療法は、がん細胞に比較的多く発現するタンパク質があることをうまく利用した治療法です。実際には、がん細胞に発現しているタンパク質に結合する抗体に、光に反応する特殊な物質(光感受性物質)を付けたものを点滴で投与します。抗体を投与した後に光を当てると、がん細胞と結合している光感受性物質が反応して熱が発生し、がん細胞が死滅します。

■がん光免疫療法に期待が高まる理由
現在のがんに対する治療法には、手術、薬物療法、放射線療法などがありますが、どの治療法も正常な細胞に影響を与えてしまう可能性があります。そのため個人差はあるものの、合併症や副作用が強く出ることがあります。がん光免疫療法では、がん細胞を認識して攻撃できるので、基本的には正常細胞は影響を受けないと考えられています。
次に、がん光免疫療法は低コストで治療できるといわれています。がん光免疫療法の鍵である光をあてる機械は何度も使用することが可能ですし、投与する抗体量も少なくて済むからです。がんにかかる医療費は高いので、できる限り低コストで実現できるのであれば理想的です。

また現在、光免疫療法は再発した頭頸部のがんに主に試されていますが、将来的にはさまざまながんに対応できるのではないかと考えられています。そして、副作用が少なく外来通院での治療も可能なので、患者の負担も少なくて済みます。体への負担が少ないので、従来のがん治療を行うことが難しい患者、例えば心臓や肺、腎臓などに重度の持病のある患者や高齢な患者にとって治療の選択肢が広がります。

■日本でもがん光免疫療法の治験がスタート
アメリカではすでに注目を集め、実際に難治性のがん患者に対する治験が進んでいます。治験の結果もよく、効果が認められています。日本でも、2018年3月から国立がん研究センター東病院で治験が始まりました。現在は、標準治療のない再発した頭頸部がんの患者を対象とした治験なので少人数しか参加できませんが、結果が良ければ今後多くの患者に適応となる可能性があるので期待したいです。

医師・医学博士 総合内科専門医/腎臓内科専門医/透析専門医
大塚 真紀

都内の大学病院に所属し一般内科や腎臓内科外来、透析管理などをしていたが、夫の仕事のため現在はアメリカ在住。現在は育児をしながら、在宅で医療記事の執筆や監修、医学論文の翻訳などをしている。信頼性の高い情報を選び、わかりやすく読者のためになる記事の作成を心がけている。今まで執筆・監修で携わってきた記事は500記事以上。

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