産業医科大学第1外科の佐藤典宏と申します。1993年に九州大学医学部を卒業後、現在まで25年間にわたり、外科医として1000例をこえるがん患者さんの手術を担当させていただきました。

日本では高齢化がすすみ、がんは増加の一途をたどっています。今や日本人の2人に1人は一生のうちにがんにかかる時代です。治療の一つの選択肢として、がんの手術を受ける患者さんも増加しています。

医療の進歩に伴い、手術の安全性はますます高まってきました。また、小さな傷からカメラ(腹腔鏡や胸腔鏡)を挿入して行う、患者さんへの負担がより軽い低侵襲(ていしんしゅう)手術が普及してきました。

一方で、手術については未だにネガティブなイメージを持つ人が多いと感じています。

「手術はこわい」
「できれば手術は受けたくない」
「手術以外の治療法があれば、そちらを受けたい」

皆さんは、こう考えるのではないでしょうか。
もし、私自身ががん患者で、手術が必要だとわかっていても、きっと本音では「できることなら手術はさけたい」と思うでしょう。

しかし、私の経験上、このようなネガティブな気持ちを引きずったまま手術をうけると、術後の合併症がおこったり、早期にがんが再発したり、望まない結果につながることが多いような気がします。

そこで、がんの手術を控えた患者さんに「どのような気持ちで手術にのぞんだらよいか」について、少しアドバイスさせていただきたいと思います。

まずは、手術ができることに感謝しましょう。
なぜなら、がん患者さん全員が手術を受けられるわけではないからです。がんが遠くの臓器へ転移している場合、あるいは大事な臓器や血管にまとわりついている場合、「切除不能」といって手術ができないことがあります。

例えば、私の専門である膵臓がんの場合、およそ7~8割の人はすでに切除手術ができないほどに進行している状態で見つかります。つまり、手術ができる人のほうが少ないのです。

さらに、肺や心臓などの重い持病により全身麻酔がかけられないため、手術をあきらめなければならない患者さんもいます。

このように考えると、手術ができる段階でがんが見つかったことは、「不幸中の幸い」とも考えられます。また、麻酔や手術に耐えられるだけの健康状態を維持できていること自体、喜ばしいことなのです。

ブログ「あきらめない!がんが自然に治る生き方」
著書「ガンとわかったら読む本(マキノ出版)」

医師・医学博士 消化器外科専門医/がん治療認定医
佐藤 典宏

産業医科大学 第1外科 講師
1000例以上の外科手術を経験し、日本外科学会、日本消化器外科学会の専門医・指導医の資格を取得。がんに関する基礎研究にも従事し、これまでに発表した論文はおよそ200編(うち130編が英文)。がん患者さんや家族にむけたブログ「あきらめない!がんが自然に治る生き方」。著書に「ガンとわかったら読む本(マキノ出版)」

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