前回からの続き

認知療法の最初のポイントは、こうしたあなたの自動思考の存在に気づくことです
。いままで、気分が良くなったり悪くなったりしていたのは、外界に起こったこと
をあなたが「それは良い(悪い)ことだ」と自動思考を通じて認識(=認知)して
いたからなのです。

現実世界で起こるあらゆる出来事は、究極的には単なる物理現象にしか過ぎず、本
来はそれ自体「意味」を含んではいないと考えられます。ですけど、あなたは自動
思考を通じてその出来事を解釈し、意味付けし、さらにはそれにふさわしい(とあ
なたが判断した)感情を呼び起こしながら、その出来事を体験しているわけです。

なんだか哲学的ですね。そうなのです。実際このあたりは現象学という哲学の研究
対象でもあったようです。そうした現象学の一分野から認識論がうまれ、さらに認
知心理学の誕生につながっていくという経緯があったのです。

そうした認知心理学的な考え方を臨床心理学や精神医学の中に持ち込んだのが、認
知療法の創始者であるベックです。彼はこうした人間の認知の仕組みを深く考える
ことにより、治療に使えるポイントを見いだしました。

いったん認知が成立してしまえば、脳によって即座に感情が誘発されてしまいます
。そこで、彼は認知が成立する過程の自動思考に目を付けました。この自動思考は
通常は無意識的なものですが、自分の心をモニタリングすることで意識に上らせる
こともできるからです。

つづく

医師 総合診療医/心療内科医/漢方医/産業医
飯島 慶郎(いいじま よしろう)

臨床心理士/産業カウンセラー/認定産業医
総合内科専門医/家庭医療専門医/東洋医学会認定医

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