今回は難しいテーマを取り扱いたいと思います。
普段がんの治療に関わらせていただいていると、必ずどこかで患者さんからぶつけられる質問があります。

「○○って、どうなんですか?知人にすすめられまして…」

がんを小さくする、なくす、治す、あるいは、元気になる、活力のある日々を取り戻すなど、たくさんの売り文句のもと、さまざまな健康食品が販売されています。なかには非常に高額なものもあります。また、「砂糖はがんを育てると聞いたので、糖質ゼロ食にしてほしい。抗がん剤の点滴に入っているブドウ糖も全部ないものにしてほしい」などという訴えもあります。では、これらの情報に、治療を受ける側はどう向き合っていけばいいのでしょうか。

■代替医療による死亡リスク
ひとつ論文を紹介したいと思います。「Journal of the National Cancer Institute」に掲載された「Use of Alternative Medicine for Cancer and Its Impact on Survival」による報告です。診断された段階で「転移がない」「がん末期ではない人」が、がんの代替医療を選択した場合、5年以内に死亡してしまう危険性が標準的な治療をした人に比べて最大で5.7倍増加してしまう可能性があるという衝撃的な内容です。

ただ、この研究は代替医療を全部一括りにしている。がんの種類は肺がん、大腸がん、前立腺がん、乳がんに限定している。規模が小さい。など、加味すべき要素もありますが、よく考える必要があるデータだと思います。

もちろんすべての代替医療や民間療法を否定するつもりはありません。その中には将来、標準治療に含まれるものもあるかもしれません。しかし、そういった代替医療というものは多くは玉石混交であり、圧倒的に”石“が多いと考えられています。特に漠然と「どんながんでも効く」という売り文句は注意が必要でしょう。がんは多様な種類があり、一括りにできるものではないからです。

■砂糖とがんは関係ない
アメリカでも糖とがんの関係はよく取り沙汰されるようですが、これについて米国国立がん研究所のサイトでは「よくある迷信のひとつ」といわれています。糖分の摂取/非摂取によってがんが縮小したり進行したりすることを証明したデータはありません。がんはたしかに生育に糖質を必要としますが、免疫細胞ががんに攻撃する際にも糖質を必要とします。第一、過度な栄養制限は身体から体力を奪い、闘病生活に必要なエネルギーの枯渇につながるおそれもあります。

また、抗がん剤の投与に使う点滴ですが、オキサリプラチンなどの抗がん剤については成分の性質上、ブドウ糖での投与を行わざるをえないこともあります。気になるかもしれませんが、それによってがんの進行に影響したというデータはありませんので、心配なく治療を受けていただければと思います。

お世話になった知人や家族からのすすめだった場合、断りにくいこともあるでしょう。ですが、その健康食品などが薬と相互作用があって、せっかくの抗がん剤の効果を半減させる可能性もあります。あるいはがん自体を悪化させてしまう可能性もゼロではないでしょう。

また、先進医療と補完代替医療とは異なるものですので、混合しないようにしましょう。そのうえで、どうしても補完代替医療に興味がある場合は、主治医や薬剤師とよく相談して決められるとよいですね。

薬剤師
深井

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