今回のトピックは新薬開発とAIのコラボレーションについてです。途方もない手間と費用のか
かる新薬開発の現場に、AIの手法を取り入れて効率化をしようという動きが本格化していま
す。皆さんともゆかりの深いお薬についての話題を見ていきましょう。

■新薬開発の困難さ
これまでにない新しい薬を作ることは、とてつもなく時間と費用のかかるプロセスです。具体
的には、まずは膨大な化学物質から、化学構造解析やこれまでのデータを用いて候補となる
物質を選定(スクリーニング)し、ここで選ばれた物質を動物実験などにかけて実際の効果や
安全性を検証し(前臨床試験)、これをクリアした物質はいよいよ臨床試験(いわゆる治験)の
段階に入ります。治験の結果として有効性と安全性が確かめられたら、薬事承認のための審
査に入り、認可をされたらようやく発売となります。

しかし、発売されたからといって安心はできません。発売後、市場に出回ってからも問題がな
いか厳しく審査されています。これだけ厳しくかつ多くの段階を経るため、一般的には新薬と
して世に出るのは、候補物質として挙げられたうちの0.1%にも満たず、かつ10年以上の時間と
200億円ほどの費用がかかるといわれています。

■スクリーニングを効率化
このような途方もない創薬の過程においても、AIの手法を用いて効率化が図れます。具体的
には、主にスクリーニングの過程において、候補物質とそれが標的とする生体内物質との親
和性(結合のしやすさ)について実験を行った結果から、候補物質の性質と生体内物質のそれ
との親和性のパターンをAIが認識し、より結合能のある物質を機械が選定するような効率化
なのだそうです。いわば「薬のソムリエ」となるAIといえそうですね。

■製薬会社の買収劇は「ビッグデータ争奪戦」?
さて、医療に興味のある人ならば、最近製薬会社の買収についてのニュースをよく聞くのでは
ないでしょうか?2018年では、国内最大手の一つである武田薬品がアイルランドの製薬会社
のシャイアーを買収しようとしたことが報じられました。こうした製薬会社の買収の目的として
、「ビッグデータ」の獲得は非常に大きなものだと考えられます。

ビッグデータとはその名の通り、各学問分野やマーケットなどにおいて蓄積された巨大なデー
タの集合であり、AIの隆盛とともにその応用対象として注目され、ビッグデータから新たな発
見を得ようとする向きがあります。

先述の通り創薬は非常に長くかつ費用のかかるプロセスで、そのためどの製薬会社も、絶対
に失敗はできないという背水の陣を敷いて研究しています。別の製薬会社の買収は、その会
社の持つ創薬研究に関してのビッグデータを買い、有益な情報を得ようという目的も多分に
あることでしょう。

次回は「医療とAIのコラボレーション―⑤DNA編集技術」をテーマにお送りします。

医療者編集部
医療AIラボ
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