前回までは、画像診断ならびに言葉による病態把握という、診断するAIについて解説しました
。今回は診断のために医師の使うAIではなく、患者さんが使う機械についてです。ただの機
械ではなく、現代の進んだAIの技術を用いれば、脳とコンピューターをつなぐという、SFの世
界のようなことが可能になります。それでは具体的に見ていきましょう。

■Brain Machine Interface(BMI)
上記のような脳とコンピューターをつなぐ技術は、Brain Machine Interface(BMI)と呼ばれてい
ます。これは、脳が体に指令を出すときに生じる微弱な電流を感知し、脳活動とその部位の
活動の連関のパターンを解析する技術で、これにより脳の指令に応じた身体運動を補助する
ような機械を作ることができます。パターンを解析するという点では、これまで紹介した画像診
断AIや医療言語処理AIと原理的には共通した部分を持ちます。

■日本で薬事承認されたロボットスーツ「HALⓇ」
BMIにより実現しうる機械として、自分の考え通りに動く、いわば「ロボットスーツ」があります。
そしてすでに現在、これは実用化されています。それが、サイバーダイン社の開発したロボッ
トスーツ「HALⓇ」です。
このロボットスーツはまさに先に挙げたようなBMIの原理を用いたもので、脳や神経の障害か
ら歩行困難となった患者さんの歩行補助や重いものを楽に持ち上げたりするなどの補助がで
きます。2015年に日本で薬事承認され、2018年8月からは茨城県つくば市の図書館の作業効
率改善のために導入されるなど、医療や介護の分野ならびに重作業の現場を中心として拡
大の動きがあります。

■BMIの未来:脳に介入することはどこまで許されるか?
ロボットスーツは、BMIを応用することの一部でしかありません。BMIの可能性としてはもっと
広く、運動だけでなく、五感までその守備範囲とすることも考えられます。たとえば、あるもの
を見ているときの脳の活動パターンを解析した機械が実現するならば、見たい映像を見ること
のできる機械というものが実現することもできます。

しかし、もしここまでの技術が実現したならば、果たして人間の尊厳というものは保たれるの
でしょうか。恐ろしい想像ですが、脳に介入する技術が悪用されたら、人の感情を操る、つま
り文字通り「洗脳」することも実現するかもしれません。頭の中という究極のプライベートな領
域にまで、機械が介入しうることは当然問題があります。技術の発達と同時に、倫理的観点
からの議論も急がれます。

次回は「医療とAIのコラボレーション4 新薬開発」をテーマにお届けします。

医療者編集部
医療AIラボ
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