前回からの続き

実は心理療法にはさまざまな流派があり、療法家それぞれの得意分野も違います。
主な心理療法の流れとしては、例えばフロイトから始まる力動的精神療法の流れ、
ロジャーズから始まるクライエント中心療法の流れ、ベックから始まる認知行動的
療法の流れなどがあります。

筆者が専門的にトレーニングを受けたものの一つに、クライエント中心療法があり
ます。このクライエント中心療法というのは、クライエントへの傾聴、受容、共感
を絶対的な柱とする心理療法です。この流派は一般の人が想像する「心理カウンセ
リング」にもっとも近いものであるといえるでしょう。

この流派の特徴は、悩みを抱えたクライエントの発する言葉を、ひたすら傾聴(関
心をもって聞くこと)し、クライエントを受容(ありのままに受け止め)し、共感
(クライエントの気持ちを、療法家の心の中に再現して体験しようとする)するも
のです。

クライエント側からすると、複雑な自分の心のうちを熱心に分かろうとしてくれ、
価値判断なしに、自分と同じ気持ちを感じようとしてくれる人が目の前にいてくれ
る、という状態を体験することになります

たとえわずかな時間であっても、このように自分の心の内を自由に話せ、自分と同
じ気持ちになろうとしてくれる(たとえそれが仕事であるとしても)人が「いる」
という感覚は、悩みを持つ人にとって大変に勇気づけられる体験となります。

そして不思議なことに、人は自分が今感じていることを「理解し、分かってもらえ
ている」という体験を積むと、いわば「一皮むけて」さっぱりし、新しい自分を見
つけることができるようになります。それは「心理的成長が起こる」ということで
もあります。

つづく

医師 総合診療医/心療内科医/漢方医/産業医
飯島 慶郎(いいじま よしろう)

臨床心理士/産業カウンセラー/認定産業医
総合内科専門医/家庭医療専門医/東洋医学会認定医

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