日本法規情報が行った「職場でのストレスについての実態調査」によると、働く男女693人のう
ち「職場でストレスを感じる」としたのは84%であり、その理由としては、「人間関係」が57%で
最も多く、2位の「仕事の量が多い」を大きく引き離す結果となりました。
このことからもわかるように、周囲の人と関係が良好かどうかは、私たちの精神状態に大きな
影響を及ぼします。

私は、精神科外来に初めていらっしゃる患者様には、「症状がはじまったきっかけとして思い
当たることはありますか」と必ずお聞きしていますが、大部分が家族、友人、上司、同僚などと
の人間関係に関することを挙げられます。
また、産業医として過重労働面談を行っている際、「残業時間が多いわりに、良い表情をして
いるな」と感じる人は、「忙しいけど、上司や同僚と協力して、困ったことがあったら助け合いな
がら仕事をしている」「家族や友人が仕事の悩みをよくきいてくれる」というようなことをおっし
ゃいます。

精神疾患を予防するために、また精神的に健康な状態を維持するために、よい人間関係を
築くことが大切だと言えます。相手の考え方や性格は変えることができませんが、私たちは、
自分の考え方や気持ちの伝え方を変えることで、相手との関係性に良い変化をもたらすこと
ができるはずです。

そこで今回は、「アサーション」をご紹介します。「アサーション」とは、相手も自分も不快な思
いをせずに、自分の気持ちを伝えるためのコミュニケーションスキルです。1950年代にアメリ
カで誕生し、1980年頃から日本でも企業研修などにとりいれられるようになりました。精神科
領域でも、「リワーク」(精神疾患で休職した人が復職する前に受けるリハビリ)で、アサーショ
ントレーニングが行われています。

アサーションの理論では、コニュニケーションを3つのタイプに大別できるとされています。3つ
とは、1)アグレッシブ(攻撃的:自分は大切にするが相手は大切にしない)、2)ノンアサーティ
ブ(非主張的:相手は大切にするが自分は大切にしない)、3)アサーティブ(自分も相手も大
切にする)です。

皆さんは、スーパーでレジ待ちの列に割り込まれたときにどんな反応をしますか?今夜はデ
ートだ!とわくわくしながら仕事をしているときに、上司から急な残業を頼まれたら?夕飯を作
ろうと思っていた時に友達から悩み相談の電話がかかってきたら?
次回、こういった場面で、上記3つのコミュニケーションパターンを持つ人がどんな反応をする
か、ご紹介しようと思います。

医師・精神科医
樋野 (ひの)
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