皆さんこんにちは。前回までは医療機関におけるさまざまな「病床」について、その役割や特
徴などについて簡単にご紹介させていただきました。さて、今回からは「治療」と「働く」の両立
という視点で、国の取り組みなどからお話を進めていきたいと思います。

【働いて納めることは、国民の義務】
私たちは健康な体で働くことで、稼ぎを得ながら暮らしを豊かにし、同時に社会を支えていま
す。しかし、ひとたび健康から遠ざかると、稼ぎが少なくなり、医療費を始めとした出費もかさ
み、暮らしにくくもなり、社会とのつながりも希薄になってしまいます。それを支えるのがさまざ
まな「社会保障制度」です。日本国民の三大権利の中に「生存権」があります。日本国民は健
康で文化的な最低限度の暮らしを国が補償していますから、どのような状況に陥ったとしても
生きることを保証されています。それと同時に、その制度運用は税金が多く使われているのも
事実です。そのため、国としては財政上どうしても国民に働いて税金を納めてもらう状況を作
っていきます。これは日本国民の三大義務の2つに「勤労」と「納税」があることからも証明さ
れています。

【働くことを支える環境つくり】
さて、働くことを国民の義務にしていることから、国民が健康で働き続けられる状況や環境を
各会社や事業場は整備していくことが積極的に求められています。各会社や事業場において
、労働者が働き続けられる状況や環境を守る取り組みは以前から存在しています。「健康診
断」を始めとした身体健康のチェックや管理は最も代表的なものです。また近年増加している
「うつ病」など、職場でのメンタル不調を抱える状況が多くなってきていることから、平成27年
12月にメンタルヘルス対策として「ストレスチェック制度」が新たに創設されました。労働者の
身体面だけではなく、精神面での健康を守ることも制度上位置づけられてきています。
一方で、心身ともに健康を維持しながら働くことを支える制度ができていても、そもそも働き手
が少なくなる状況においては、納税額も低下し、ひいては国の経済活動は衰退が考えられま
す。ここからは少しだけ超少子高齢社会という今の社会問題と併せて「働く」ということを見て
みましょう。

【超少子高齢社会でのさまざまな働き方】
団塊の世代が75歳以上になり、国民の3人に1人が65歳以上となる2025年は、まさに生産年
齢人口(15歳から64歳)が少なく「働き手」が減少する状況に陥ります。これを打開するために
、各会社や事業場では効率化をはかりオートメーション化できる環境を作り、人工知能(AI)を
駆使して人間が介在する部分を極力減らしていくような取り組みにシフトしている状況があり
ます。医療の現場においても、新薬の研究開発に人工知能(AI)の活用が大きく注目されて
います。また介護分野でも、働き手不足を解消する1つの方法として、介護の機械化を挙げて
います。平成25年6月に政府がロボット介護機器の開発や導入促進に戦略的に取り組むこと
を発表し、ロボット技術の介護利用を積極的に進めています。移乗介助支援を始めとした装
着型介護ロボットスーツは既に現場に取り入れられている所もあります。それでも、働き手は
足りないのが現状です。

さらに、平成30年1月に厚生労働省から出された「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を
始め、平成30年4月に国会に提出された「働き方改革関連法案」と併せて考えると、働き手が
少ない今の日本では、「制度的にも、技術的にも、環境的にも、働ける状況を整えるから、国
民の皆さん働きましょう」というメッセージが込められているように受け取れます。国の仕組み
としては働いて納税をしてもらいたいという意図はぬぐえません。しかし、これらの社会情勢
は決して悪いものではないと考えられます。例えば、がんにり患されている人を始め、慢性疾
患を抱える人々も、自分の体調と自分のスキルに併せた働き方ができるということであり、そ
れを国が積極的に進めており、各会社や事業場がそれを応援する形になっているからです。

次回も引き続き「治療」と「働く」の両立についてお話ししたいと思います。

社会福祉士
佐々木

この執筆者の記事一覧

がんと療養

がんと付き合いながら働くこと

暮らしとお金

医療者コラム

PAGE TOP