さて、少し間が空いてしまいましたが、大腸がんの患者さんの痛みにどう私たちは対応してい
るのでしょうか。

患者さん情報:Aさん 68歳 男性
症状の情報:数カ月前から便が少し黒っぽく気になっていたが、なんとなくそのままにしてい
た。最近疲れやすくふわふわするので近くのクリニックで検査してもらったところ貧血があり、
便潜血が発覚。精密検査を行ったところS状結腸がんであり、肺と肝臓に転移があることがわ
かった。最初の治療法は「FOLFOXIRI+Bev」に決まり、治療を開始していたが、今回新たに左
肩の痛みから肩甲骨への転移がみつかってしまったため、痛み止めを検討する必要がある。

■鎮痛剤の実際
痛み止めについて前回まで4回にわたっていろいろとお話しました。ではその知識をもとに医
療者はどう痛み止めを検討しているのでしょうか。
前回お話したWHO式3段階除痛ラダーに沿って考えるなら今回もまずは、ロキソプロフェンナ
トリウムやアセトアミノフェンなどの第一段階の薬剤から開始していきます。

しかし実際にどれくらい痛みがあるかということをよく考慮します。痛みの強さ次第ですが、
例えば今回の症例ですと左の肩甲骨の痛み、こういう場所の強い痛みは睡眠を阻害します。
まともに眠れない、寝返ると目が覚めてしまい、徹夜に近い状態がずっと続いている。

こういう状態の痛みに対しては教科書通り一歩一歩着実な薬の調整をすることが必ずしも
患者さんの利益にはなりえません。大事なのは患者さんの痛みを取ることであって、
教科書的に正しい痛み止めの調整をすることではありません。
もし私がこの状況に出会い、患者さんが強い痛みを訴えておられた場合は、はじめから麻薬
性鎮痛薬とNSAIDsの併用で提案しますし、それが患者さんのためだと考えています。

■レスキューとベース
さて、痛み止めが処方されました。具体的な例として商品名も入りますが、以下の処方が出さ
れたとしましょう。
オキシコンチン錠 5mg 12時間ごと
オキノーム散 2.5mg痛いとき(1時間あけて回数制限なし)
セレコックス(NSAIDs)100mg朝・夕食後
オキシコンチン・オキノームは「オキシコドン」という麻薬性鎮痛薬で、同じ成分です。これがな
ぜ2種類別の用法用量で処方されるかというと、がん性疼痛には「常に起きる痛み」と「突発
的な痛み」の2種類があるからです。

常時起こる痛みには徐放性製剤といわれる1度飲めば半日から1日くらい効く薬(=ベース薬
)が使われます。一方、突発的な痛みには「レスキュー薬」といわれる10〜30分ほどで効果が
現れ、1時間ほどで消失する「早く効いてすぐに抜ける薬」が使われます。

がん性疼痛の突発的な痛みは、なにもしなくても30分ほどで収まることが多いと言われてい
ます。そのため、痛み始めてからレスキュー薬を使っても、効き始める前に痛みが収まってし
まい、効果を実感できないことが多くあります。例えば、体を動かす前、あるいは痛みそうな
感じがじわっと来たとき、そういった「痛むちょっと前」にレスキュー薬を使うのがコツであり、そ
れをうまく使えるかどうかで、がん患者さんのQOLは大きく差があるように思います。

薬剤師
深井

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