今回も患者さんの治療決定に私たちがどのような思考プロセスで臨んでいるかについての解
説です。

患者さん情報:Aさん 68歳 男性
患者さん相談:数カ月前から便が少し黒っぽく気になっていたが、なんとなくそのままにしてい
た。最近疲れやすくふわふわするので近くのクリニックで検査してもらったところ貧血があり、
便潜血が発覚。精密検査を行ったところS状結腸がんであり、肺と肝臓に転移があることがわ
かった。最初の治療法は「FOLFOXIRI+Bev」に決まり、治療を開始していたが、今回新たに骨
に転移がみつかってしまった。

■2nd line治療
前回より、2次治療(2nd line)としてFOLFIRI+Bvを行うことになりました。この治療では以前も
お話したように治療のギアチェンジ、完治ではなくがんと付き合って生きていくという観点が重
要になります。重ねてつらいお話になりますが、副作用を必要以上に我慢することは、自分の
生活の質を下げることになりかねません。つらければ、つらくないように減量やスケジュール
を見直します。

FOIFIRI+Bvで使用する薬剤は「5−FU、イリノテカン、ベバシズマブ」になります。2週間ごとに3
日間の点滴を行うものですが、症状として多いのは投与初日〜5日目ごろまでの吐き気、倦
怠感。初日のみ起きるものとしてお腹がギュルギュルと痛んで下痢をしてしまう症状があり、
投与5日後頃からもまた下痢がしやすくなります。また特徴的な症状として血圧が上がる、出
血しやすく傷が治りにくくなる。まれにですが危険なものとして血栓塞栓症(脳や肺・心臓など
の血管が詰まる)、消化管穿孔(胃腸に穴が開く)なども報告されています。

外来での治療が行われ、家で過ごす時間が長くなったとしても、急にろれつが回らない、思う
ようにからだを動かせない、胸が苦しくなった。あるいはお腹に急な激痛が走った。などの症
状があったときは「もしかしたら」と考えすぐに主治医に連絡をとれるようにしておくことが必要
です。通常、すぐにケータイの連絡先に病院の電話番号まで記録してもらっています。どうし
ても重大な副作用というのは発生する確率が低いこともあり「まさか自分には起こらない」とど
こかで考えてしまうものです。説明は受けていたが登録は後回しにしてしまっており、症状が
起きてから病院の電話番号を探すのに必死になったという人もいました。そのことがあってか
ら、私はなるべくすぐに登録してもらうようにしています。

■痛みへの対応
前回骨転移への対応をお話しましたが、がん患者さんの実に9割ががんに関連したなんらか
の痛みを経験すると言われています。たまにまったく痛くないという人も確かにいらっしゃいま
すが、この症例のように骨と肝臓に転移が見られる場合、その箇所の痛みが強くなることは
自然なことです。骨折などの「骨関連有害事象」といわれるイベントの発生率を下げるために
使う前回のBMAなどの薬以外にも、当然鎮痛薬が必要になっていきます。ここでいわゆる麻
薬性鎮痛薬が出てくるわけですが、次回このあたりについてまとめていきます。

記事を振り返ってみると、痛みについての薬の使いかたについてあまり今まで言及してきま
せんでした。次回以降その点について詳細にお話していきたいと思います。

薬剤師
深井

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