前回からの続き

さて、がんサバイバーの概念と定義についてここまで触れてきました。次は「がん
サバイバーシップ」という言葉についても考えてみようと思います。

がんサバイバーシップという言葉もまた、がんサバイバー自体と同じように、外来
語であると同時に輸入概念です。やはりこの言葉も、日本語の中に相当する言葉や
概念がないために、直接概念ごと言葉を輸入したものといえます。

サバイバーの後ろについているシップ(-ship)というのは、英語の接尾辞の一種です
。同様の用法にスポーツマンシップ(sportsmanship)やリーダーシップ
(leadership)などという単語が有名ですね。スポーツマンシップは「選手精神
」、リーダーシップは「統率力」などと訳されることが多いですが実はこれは、も
ともとの-shipが持っている意味の多くをそぎ落とした意訳といえます。では、本来
の-shipが持つ意味とはどんなものなのでしょうか?

試しに、英和辞典で-shipを引いてみると、状態、性質、資格、地位、役職、能力、
技能、関係、集団、地位とあります。これでは本来の-shipの意味は見えてきません
。~shipという単語をあえて「~であること」と直訳する場合もありますが、日本
語としてあまり意味が通じません。たとえば、「選手であること」、「リーダーで
あること」、「がんサバイバーであること」といっても何のことやらさっぱりわか
りません。

それもそのはず、この-shipに相当する日本語がないため、原理上訳すことができな
いのです。実はこの-shipという接尾辞は、前に続く言葉の概念をさらに広く拡張す
るための英語の接尾辞なのです。このように解釈すると一気に意味が通じてきます

つまり、スポーツマンシップは単に選手精神というだけではなく、「選手であるこ
とによって生じる諸々のこと」も包含する概念ですし、リーダーシップも単に統率
力だけを示すものではないのです。同じようにがんサバイバーシップというのは、
がんサバイバーの概念をさらに拡張し、「がんサバイバーであることよって生じる
諸々のこと」を包含する概念だということです。

つづく

総合内科専門医/臨床心理士
飯島 慶郎

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