今回も患者さんの治療決定に私たちがどのような思考プロセスで臨んでいるかについての解
説です。

患者さん情報:Aさん 68歳 男性
患者さんの症状:数カ月前から便が少し黒っぽく気になっていたが、なんとなくそのままにして
いた。最近疲れやすくふわふわするので近くのクリニックで検査してもらったところ貧血があり
、便潜血が発覚。精密検査を行ったところS状結腸がんであり、肺と肝臓に転移があることが
わかった。今回、医師から化学療法を行うことを伝えられ、いくつか薬の組み合わせの候補
があるから決めてほしいと伝えられ、治療法は「FOLFOXIRI+Bev」になり、治療を開始した。

■投与後の副作用
4コースを投与し、副作用にはおおむね対応できていましたが、ここにきて手足のしびれが現
れはじめました。オキサリプラチンによる末梢神経障害でしょう。こういったとき、私たちは重
症度を日常生活への影響の有無を基準に考えるというお話を第18回のしびれでお話しまし
た。今回はまさにこれに従って患者さんのしびれをランク付けします。もしGrade3の細かい作
業ができず生活への支障がある段階であれば、オキサリプラチンを一度やめなくてはなりま
せん。可能ならその前段階、若干のしびれを感じるかどうか、というところで治療薬を開始し
たいところです。

では、何を使うかというと、しびれに対しての治療法はまだ確立されていないのが現状です。
そのなかで何を使うかは論文や使用経験から考え、いろいろと試してみるしかありません。前
回同様、try and errorですね。一番現状で効果が期待されているのは抗うつ薬のデュロキセ
チンかもしれませんが、これはあまりオキサリプラチンのしびれと相性が良くないという報告も
あります。今回はプレバガリンという神経の過剰伝達を抑える薬から試し、反応がなければや
はりデュロキセチン、少量の麻薬性鎮痛薬、3環系抗うつ薬なども試していくことになるでしょ
う。うつ病の薬を用いるからといって心配される人もいますが、うつに関係する神経経路とし
びれの神経過敏の物質に似たものがあるというだけなので心配は無用です。ですが、これら
の薬もそれぞれ4人〜6人に1人程度、効果が期待できると言われているに留まります。いろ
いろ試して、合った薬を見つけるというわけですね。

■安心した頃のアレルギー
オキサリプラチンをこの後も続ける場合(6コースでオキサリプラチンは中止する可能性のあ
る治療法です)は、8コース目周辺でのアレルギー発症リスクが上昇するという報告もありま
す。なので私たちは8コース目を行っている患者さんはなるべく治療当日、それもオキサリプ
ラチンの投与のタイミングを狙って訪室します。もし、起きてしまった場合はもうオキサリプラチ
ンの投与は基本的に行いませんが、どうしてもオキサリプラチン以外に選択肢がない場合は
脱感作療法というアレルギー症状を改善させる方法についても検討することがあります。

薬剤師
深井

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