今回も患者さんの治療決定に我々がどのような思考プロセスで臨んでいるかについての解説です。

患者さん情報:Aさん 68歳 男性

数ヶ月前から便が少し黒っぽく気になっていたが、なんとなくそのままにしていた。最近疲れやすくふわふわするので近くのクリニックで検査してもらったところ貧血があり、便潜血が発覚。精密検査を行ったところS状結腸がんであり、肺と肝臓に転移があることがわかった。今回、医師から化学療法を行うことを伝えられ、いくつか薬の組み合わせの候補があるから決めてほしいと伝えられ、治療法は「FOLFOXIRI+Bev」になり、今日1回目の投与を行った。

■ガイドラインどおりに予防薬を使ったが…
いよいよ、化学療法が始まりました。ところが1日目にしてすぐに気持ちの悪さを訴え、ムカムカするわけではないが晩御飯が手につかないようです。こういうとき、我々はまず他の疾患や原因が吐き気の原因になっていないか注意しながら外見・会話・検査から薬剤による副作用だと判断したうえで方針を考えます。今回吐き気が強く現れてしまいましたが、ガイドラインに従った吐き気止めは一番強いレベルのものを行っていました。こういう場合に私の頭に浮かぶ選択肢は3つです。まずは頓用でドーパミン伝達を遮断することで消化管の動きを促進させる薬剤を使うこと、統合失調症の際に使用する薬剤を使うこと、胃薬を併用することです。

効果の面から言うと使用経験としては統合失調症の薬が一番期待できるでしょう。ですが、なんとなく拒否反応を示す患者さんも多くいます。消化管運動促進薬は「食べる前からなんとなく食べたくない」にはそこまで効く印象がなく、ムカムカしてない症状だと胃薬も期待しにくいかな、と思います。こういうときは、患者さんとよく相談して決めます。統合失調症の薬は一番期待値が高いとは言いましたが、こういう状況だと「やってみて、試してみて考える」try and errorしかないのが現実です。「そんな人体実験みたいな」と言う人もたまにいらっしゃいますが、みんなそれぞれ効きが違う以上、そうせざるをえないのです。それを支えるのが薬剤の作用機序という理論や使用経験というものになります。

■お腹が痛くなっても大丈夫なように…
患者さんに当日お会いしたとき、水っぱながでるとか汗ばむと言う訴えがあったときは治療に使うイリノテカンという薬の副作用を疑います。その場合、数時間で急撃にお腹がギュルギュルと傷んで下痢が出てしまったりする可能性が予想されます。この場合、通常の下痢止めではほとんど効果が期待できないため、腸の筋肉をリラックスさせる効果のある薬剤を事前に腹痛時使えるようにしておくよう調整したりもします。

薬剤師
深井

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