がんを根治できないとわかった時、患者さんが気になることは、
自分にどれだけの時間が残されているかということでしょう。

ドラマでも「あなたの寿命はあと何カ月です」というシーンを見たことがあると思いますが、
実際に、あとどれくらい生きるかを予測することは可能なのでしょうか?

告知において予後の話をする時に用いられる考え方が、生存期間中央値です。
同じ条件のがんにかかった人の中で生存期間が真ん中であった人の期間を指します。

イメージしやすい言い方をすれば、生存期間中央値より短い可能性が半分、
長い可能性が半分というだけで、その期間必ず生きられるというわけではありません。

予後の正確な予測は経験のある医師でも不可能に近いです。
そのため、2・3カ月幅を持たせて告知をする医師もいれば、
「年は越せるけれど、桜は見れないかもしれません」と季節やその人にとって
大切なイベントを基準にして話す医師もいます。

大切なのは、予後の告知によって「あとこれしか生きられない」と思うのではなくて、
残された時間をどのように過ごしたいかということです。

もちろん予後の話を聞きたくないと感じる人もいます。
告知を受ける前に、どこまでの内容を聞きたいかを事前に伝えても構いません。

進行がんの患者さんでは、化学療法を行なってどれだけ寿命が延びるかという質問をされる
患者さんもいます。これについても研究論文を元にお話しすることはできますが、
化学療法がどれくらいその人の負担になるかの予測は難しいのです。

必ずしも化学療法で予後延長が期待できないのも現実です。

そのような話をすると、化学療法をやりたくないと思われる人もいますが、
決して化学療法を始めたら止めれないわけではありません。

化学療法を開始した後でも、副作用の程度や効果があるかどうかを判断して調整することができます。

一方で、あとから化学療法をやりたいと思っても、がんの進行によって日常生活の動作が低下して
化学療法を行えないこともあります。患者さんの生きたい気持ちを汲み取って意思決定をサポート
するのも、医師の役割です。

治療が行えなくなり、がんの末期になるほど、予後予測は正確にはなってきます。
短い週単位や日単位という言葉を使った場合、最後の時間が迫っていることを表します。

正確な予測はできないという前提の元で、残される家族が後悔なく患者さんと時間を過ごすために、
予後を伝えることには意義があると感じます。

内科医
村本

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