心身ともに健康であるとき、無意識に自分のからだが自分と一体化し、いかにも自由自在に
操れるような感覚をもたらします。しかし、いったん病気になると普段は感じていなかった健康
のありがたみをひしひしと感じるようになるのではないでしょうか。もしかすると呼吸をすること
でさえ意識し、からだのさまざまな部分が助けを求めるがごとく訴えかけてきます。その自分
のからだからの訴えに耳を傾け、医療者にうまく伝えようとしても、パニックに陥った時ほどう
まく伝えられなかったりします。

一つの例として自分の父ががんにかかった時のことをお話しします。私の父も12指腸乳頭部
がんになり手術をしたのですが、その前に家族全員で手術の説明を受けました。説明後、父
は担当医から「理解できましたか」と問われたときに「理解できない」と率直に答えるような患
者でした。その時は私もびっくりしどうしたらよいか迷いましたが、担当医がより丁寧に説明し
てくださり、父の言葉に耳を傾けてくれ、一応は納得を得たため胸をなでおろしたのを覚えて
います。

当時を振り返ると、父もある意味平常心を失っていたのだと思います。幸いにして担当医が懇
切丁寧に説明してくださったおかげで事なきを得たのですが、自分の症状を率直に伝え、分
からないことを「分からない」と言えるか、意見が分かれるところだと思います。
もし、自分ががんといわれ、さまざまな検査の画像を見せられ、難しい言葉で説明をされたら
「理解できない」というのは普通の感覚かもしれません。特に患者が高齢である場合はより注
意が必要です。だからこそ、このような病状説明の際にはできるだけ多くの家族が賛同できる
ように全員で聞くことが望まれます。

医療者に遠慮し、聞きたいこともうまく聞けない、あるいは全てお任せする、という患者さんも
中にはいらっしゃると思います。しかし、からだは患者さん本人のものであることには間違い
はなく、そのつらさは当の本人が一番わかっているところです。ぜひここで、遠慮せず医療者
に伝えてください。

伝えるポイントは「つらいこと」「心配なこと」を分けて話してみることです。
例えば、つらいことでいうと一番は痛み、ではないでしょうか。もちろんそのほかの症状として
、吐き気・食欲不振・怠さ・渇き・めまい・・・さまざまありますが、何が一番つらいか、に焦点を
当てると話しやすく、医者もその苦しみを取り除く手立てを考えやすいのです。

また心配なこともいろいろあると思います。これからどのような経過をたどるのか、が焦点で
すが、患者さんによってはこまごまとした生活の仕方について心配される人もいます。そのよ
うなときには看護師がお手伝いしますが、栄養士や理学療法士、社会福祉士等の職種が関
わることもあります。それぞれの専門分野にそってお手伝いできるので、「今一番心配なこと(
困っていること)は・・・です」と伝えてください。医療チーム一丸となって解決に向かえるよう力
を尽くします。

医療者というのは基本的に人助けが好きな集団です。患者さんやその家族も医療者の特性
をよく生かしてお付き合いしてみると少し違う景色が見えるはずです。試してみてください。

看護師・保健師
舘野

この執筆者の記事一覧

子どもへの伝え方

家族との接し方

医療者との接し方

がんと付き合いながら働くこと

がんと暮らし

リフレッシュ方法

PAGE TOP