前回からの続き

さて、前項まではあえて寄り道し、「新しい言葉を通して新しい概念を輸入する」ということについて、触れてきました。こうした前提をふまえて、あらためて「がんサバイバーシップ」という概念の紹介に戻っていこうと思います。

「がん患者」と「がんサバイバー」、この二つの言葉の違いはどこにあるのでしょうか。

表面的には、以下のように定義されることが一般的です。

「がん患者(cancer patient)」:現在医療機関でがん治療中の人。
「がんサバイバー(cancer survivor)」:現在治療中かどうかにかかわらず、
一度でもがんにかかったことのある人。

しかし、こうした表面的な定義の違いはさておいて、それぞれの「英単語自身」がもつ「言霊」とでもいうべき深い意味が、実は大きく違っているということを、あなたに理解していただきたいのです。

英語のpatient(患者)は、ラテン語の「苦しみに耐える、我慢する」を表す動詞「patior」を由来に持ちます。例えば、同じ由来をもつpatienceは「忍耐、耐え忍ぶこと」 などと訳されます。したがって英語で治療中の人をpatient(患者)と表現すると、どうしてもこうした「苦しみに耐えている、かわいそうな人」というイメージにつながってしまいます。

そして、このことは言霊として医療者や患者そのものの行動を制限してしまう可能性もあります。医療者が無意識に患者にpatience(忍耐、我慢)を要求するもとになるとも考えられますし、患者自身も自らをpatience(耐え忍んで我慢)する立場にあるものと感じ、自尊心を縮小させてしまうかもしれません。

つづく

医師 総合診療医/心療内科医/漢方医/産業医
飯島 慶郎(いいじま よしろう)

臨床心理士/産業カウンセラー/認定産業医
総合内科専門医/家庭医療専門医/東洋医学会認定医

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