今回から新しいテーマと具体的な患者さんのデータを元に解説していきたいと思います。治
療に関しては、ひとつの例であり、個人差があります。

患者さん情報:Aさん 68歳 男性

数カ月前から便が少し黒っぽく気になっていたが、なんとなくそのままにしていた。最近疲れ
やすくふわふわするので近くのクリニックで検査してもらったところ貧血があり、便潜血が発覚
。精密検査を行ったところS状結腸がんであり、肺と肝臓に転移があることがわかった。今回、
医師から化学療法を行うことを伝えられ、いくつか薬の組み合わせの候補があるから決めて
ほしいと伝えられている。

■「決めてください」と言われても…
この例は実際よくあるパターンです。いくつか選んでくださいと言われても、がんの告知や状
況を整理するので精一杯で、なかなかそこまで頭がついてこないこともあるでしょう。自分の
ことなのだから、きちんと自分で選ぶことが大切というのも頭ではわかっていても予備知識も
ないので「いっそ医師に決めてほしい」という話もよくあります。

■ 化学療法の選び方
大腸がんを始めとした固形がん(血液がん以外のもの)の多くは化学療法にはいくつかの種
類があり、基本的に「効いている間はその化学療法を繰り返し行い、がんが増大に転じたら(
効かなくなってきたら)違う治療法に切り替える」「使える化学療法の種類はなるべく使い切っ
た方が長い予後を得られることが多い」という考えがあります。そしてその化学療法の種類は
臨床試験で決められ、多くの患者さんに協力していただいたデータから効果があると統計的
に認められた使い方をしていきます。

今回の例で言えば
1. オキサリプラチンベースの化学療法+分子標的薬
2. イリノテカンベースの化学療法+分子標的薬
3. オキサリプラチン・イリノテカン併用の化学療法+分子標的薬
のなかから決めることになるでしょう。

ポイントは3つです。
・治療効果
・副作用
・根治を目指すかどうか

この場合1と2は治療効果は同じと言われています。どちらも効果はおよそ8〜12カ月ほど続
くことが多く、その後使わなかった方の治療法へ切り替えますが(1→2または2→1)、後半に
行ったほうが使える期間は少し短くなる傾向があります。その違いは副作用で、1は第18回で
取り上げたようなしびれ、2は第12回の下痢や23−24回の脱毛などが必発します。

また、2は遺伝子の型によってはその副作用が非常に強くでる人もいて、使いにくいこともあ
ります。どのみち、どちらもやることになることは多いですが、より長く使う治療法の副作用は
より慎重に考慮する必要があるでしょう。普段水場での仕事が多いとか、美容系のお仕事な
どをされているといった患者さんの生活に極力影響がない方を決める必要があります。

3は効果が強く、より根治への期待も高い治療法です。しかし、今回の場合、肝臓・肺どちら
にも転移があり、転移の仕方によっては最終的に「薬で小さくして手術で取りきる」=根治は
難しいこともあります。1と2の副作用が同時に襲ってくることもあり、体力と相談する必要もあ
るでしょう。高齢者や元々体力がなく自分のまわりのことも多少困難な場合だとそもそも医師
がすすめないこともある治療法です。

文字数の都合上、今回はまず治療法の選び方の触りだけお話しました。次回さらに続きをお
話していきます。

薬剤師
深井

この執筆者の記事一覧

様々な副作用の対処法

がん治療の選び方

がん治療薬について

薬剤師の頭のなか

医療者コラム

PAGE TOP