これまで何度もがん患者とそのご家族の別れに立ち会わせていただきました。
がんという病気は、がん患者本人だけではなく、その家族にも負担を強いることに
なります。私自身もがん患者の遺族であり、医師として残された家族を癒すことは
、私自身を癒すことにもつながっています。

WHOでは、受け止める時間が少ないなかで、残された家族ががん患者さんとの死別後
にも、うまく適応できるような支援を行うことが重要であると位置づけています。
がん患者は他疾患と違い、ぎりぎりまで活動が保たれます。そのため周りがまだ大
丈夫と感じていても、急な別れになることが少なくありません。また、家族が病気
になることによる経済的な変化も問題となります。

がんなどの大きな病気にかかると、その家族はどうにか治そうと治療法や食事療法
、そして民間療法まで情報を積極的に集めるようになります。しかし、無理な励ま
しはがん患者本人にプレッシャーを与えてしまうことに注意する必要があります。
また一方で、がんが進行し終末期にさしかかると、食い止められない症状に対して
家族が無力感を感じることが多々あります。そんな時、がん患者さん本人から不安
の訴えが出ると、どう応えたらいいかわからなくなってしまいます。

そして最後の時間を迎えた場合に、心臓マッサージなど侵襲的な処置を行わない
DNARや苦痛が大きくなった時に鎮静を行うかどうかの判断を、がん患者本人ととも
に考える必要があるということも家族の精神的な負担になります。
特に高齢者の夫婦2人暮らしでは、急変時にもパートナーが最後の最後まで受け入れ
られずに意思決定が遅れてしまう場合もあります。そういう場合は、遠慮せずに子
どもがいれば、子どもに頼るという選択肢を考えるのも良いのではないでしょうか。

また、がん患者ばかりに注意が向いてしまうあまり、その家族自身の病気の治療が
ないがしろにされることが考えられます。家族の介護をきっかけに受診を中断して
しまい、病状が悪化してしまうこともあるのです。

周りの人ががん患者や家族に励ましの言葉を投げかける場合、「大丈夫、大丈夫」
と当人たちの苦悩を過小評価してしまうと、かえって有害なサポートになってしま
います。

医療従事者も含め、一方的に意見を押し付けるのではなく、がん患者とその家族の
体験や心情をありのままに受け入れることが何より重要です。

内科医
村本

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