がん細胞は、増え続けかたまりを作る性質をもっています。単に増え続けるだけでなく、
周囲に広がったり(浸潤)、ほかの臓器に移ったり(転移)して新しいがんを作る特徴が
あり、からだのさまざまな臓器にダメージを与え、生命に重大な影響をおよぼします。が
ん細胞は正常な細胞が取り込もうとする栄養を奪い、からだをどんどん衰弱させる特徴を
もっています。薬に対する強い耐性も特徴です。がんは正常細胞が本来持っている
増殖プログラムに異常や変異を持っているため、薬などを使って殺しても、少し
でも生き残っていると、抗がん剤が効きにくく死なないように増殖のプログラム
を変えてくるのです。

正常な体では、必要以上に細胞が増え続けないよう細胞増殖因子の働きは、厳密
にコントロールされています。がん細胞はなぜ増えるのかというと、すべてを自分の味
方につけてしまう、ずるい仕組みを持っているからです。

からだの表面にある細胞や骨髄で作り出される血液中の細胞を除いて、成長した
体の細胞はほとんど増殖しません。増殖を止めるブレーキの役割をするタンパク
質が働くからです。しかしがんは、正常細胞では必要なときに必要な量だけ作ら
れる細胞増殖因子を多量に生産分泌して、自らの細胞の増殖プログラムを呼び醒
まし、ブレーキを利かなくしてしまうのです。

細胞増殖因子の中で代表的なのが血管内皮細胞増殖因子(VEGF)で、周囲の血管
、とくに毛細血管を作る血管内皮細胞に働きかけます。すると血管内皮細胞は急
激に増殖を始めます(血管新生)。そしてがんは新しい血管を呼び込み、十分な
酸素と栄養をもらい一気に大きくなります。しかもがん細胞は、血管にひっそり
と入り込み、他の組織へと移動することができます。

いわば、がん細胞という車が新しい血管という道路を通り、遠くまで移動します
。そして酸素や栄養という店舗が増えます。すると、がんという大きな街ができ
るわけです。がん細胞の増殖を抑えるには、車のブレーキの役割をするタンパク
質の働き、新しい道路の封鎖が重要になってきます。

がんの特徴である異常な増殖と転移、薬剤耐性の仕組みが明らかになれば、低用
量の化学療法剤と併用して、効率的でより副作用が少ない治療が望めます。その
ために世界中で、がんの早期発見のための精密でより優れた検査方法や、がん細
胞のメカニズムの解明について研究されています。

最近は、臓器同志でもメッセージのやりとりをするネットワークがあることが解
明されてきており、がん細胞からメッセージが出ているということもわかってき
ています。そのメッセージを成分として検出し、1滴の血液検査で調べることがで
きるようになってきました。今後の医学の発展に注目ですね。

臨床検査技師/緊急検査士
石﨑 沙織
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