医療過誤が発生したとき、患者は病院や医師に責任追及していくことになりますが、このとき
、どのような法律にもとづいて請求をするのか、ご存じですか。今回は、がんの先端医療を受
けるケースでも問題になりやすい「医療過誤を主張するための法律」について、説明します。

■債務不履行責任と不法行為責任
病院で医療過誤が発生すると病院や医療過誤を起こした医師・看護師などの医療従事者に
は、以下の2種類の責任が発生する可能性があります。
 債務不履行責任
 不法行為責任
それぞれについて、詳しく見てみましょう。

■債務不履行責任
債務不履行責任とは、契約関係のある相手が、きちんと契約通りの義務を果たさなかった場
合に発生する責任です。病院で医療を受けるときには、病院や医師との間で、適切な医療を
受ける(提供する)ことを内容とする診療契約が成立します。
しかし、この契約に反して医師や病院がきちんと治療を行わず、患者に損害を発生させてい
るので、義務違反となり、債務不履行責任が発生します。契約相手に債務不履行責任が発
生すると、契約の解除や損害賠償請求できますので、患者は契約相手である医師や病院に
対し、慰謝料を始めとした損害賠償請求をします。
ただし、債務不履行責任が発生するのは契約当事者だけですから、病院と診療契約をしたと
きには、医師や看護師には責任追及できません。契約相手である医療法人に対して損害賠
償請求を進めていきます。これに対し、個人事業の医院で医療過誤を受けた場合には、契約
相手は医師本人になりますので、医師に債務不履行責任を追及します。

■不法行為責任
もう1つは、不法行為責任です。不法行為責任は、故意や過失によって違法行為を行い、他
人に損害を発生させたときに発生する責任です。契約関係がなくても、不法行為は成立しま
す。そこで、病院だけではなく、医療過誤を起こした医師や看護師本人に対しても、不法行為
責任であれば追及できます。

実際の医療過誤訴訟では、債務不履行責任と不法行為責任を組み合わせて、医療法人の
みを訴えるのか、医療法人と医療従事者(医師や看護師)を訴えるのか、あるいは医療従事
者のみを訴えるのかを決めなければなりません。
ケースに応じて適切な選択が必要ですので、お困りの際には、医療過誤に強い弁護士に相
談して決めましょう。

医療ジャーナリスト(法律家)
福谷 陽子
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