前回からのつづき

根治を目指したがん治療の場合には、この種の(がんを急性疾患ととらえた)療養
方法も絶対に間違いというわけではありません。しかしこのとらえ方は、治癒が保
証されるまでの長い年月の間、あなたの生き方を意識的・無意識的に制限してしま
う可能性があります。

たとえば、「疲労を貯めるとがんの再発を招いてしまうのではないか」、「完全菜
食主義に変えれば再発が少なくなるのではないか」、「高価な健康食品を用いるべ
きではないか」といった「今よりさらに完璧な療養の仕方があるはずで、他のこと
を犠牲にしてでもそれらを追求するべきではないか」といったあまり生産的でない
葛藤に巻き込まれてしまうことも予測されるからです。

また、残念ながら再発を迎えてしまった場合は、「もっと○○していれば再発を防
げたのではないか」、「○○し過ぎたのが悪かったのではないか」と自分自身を責
めてしまうことになるでしょう。そして、「こんなことなら、我慢せずにもっと
○○しておけばよかった。大切な時間を無駄にしてしまった」という強い後悔の念
につながってしまう可能性すらあります。このように、がんを急性疾患ととらえて
「療養」そのものを目標にしてしまうと、本来のあなたらしい人生を送ることを妨
げてしまうことすらありうるのです。

一方、あなたが慢性疾患にり患した場合には、病をいわゆる「持病」ととらえ、上
手に付き合って日常生活を維持することを考えるはずです。療養ももちろん大切で
すが、急性疾患のように療養だけに集中していることは不可能であり、また望まし
いことでもないと感じるでしょう。「持病」の療養に集中しすぎることは生活のバ
ランスを崩し、本末転倒ともなりかねないことが容易に想像できるからです。

つづく

医師 総合診療医/心療内科医/漢方医/産業医
飯島 慶郎(いいじま よしろう)

臨床心理士/産業カウンセラー/認定産業医
総合内科専門医/家庭医療専門医/東洋医学会認定医

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