前回からの続き

かつては、根治不能がんと診断されれば、残された時間は比較的短いものでした。
しかし、現在では前回で述べたように、そうした患者さんががんと闘病しながら生
きる期間が格段に長くなり、これからもどんどん伸び続けるであろうことが予測さ
れます。また、新薬の開発、採用スピードも格段に上がっているため、闘病中に新
しい薬が利用できるようになり、展開が大きく変わるケースも増えてきています。

こうした背景により、がんという疾患自体がもつ社会的意味も大きく変容しようと
しています。この点をよく理解することで、あなたがよりよい療養生活を送る手助
けになるはずですから、これからこの点についてご紹介していこうと思います。

近年、がんを「慢性疾患」として捉えようという動きが盛んです。これは、単に積
極的延命治療が進歩して、「り病期間が以前よりずっと長くなったから」というだ
けの意味ではないと私は考えています。がんを慢性疾患と捉えることの本当の意義
は、患者さん自身への啓発にあると感じられるからです。たとえば、あなたが自身
の病気を慢性疾患と捉えるか、それ以外と捉えるかで、病気に対してとる姿勢が変
わってくるはずです。あなたががんと向き合う基本姿勢を、より現実に即したもの
に導こうとする啓発的な意味が含まれているのです。

一般に、病を急性疾患と捉えた場合には、治癒を目指した行動が最優先とされ、療
養以外の行動の優先度は極端に落とされます。たとえば、肺炎で入院した時には、
完治するまでは療養に集中し、なるべく外出を控えて体力を温存し、ぶり返さない
ように休養することが求められるでしょう。この間に大切な用事があったとしても
、それはほとんどの場合キャンセルされることになるはずです。多くの人は病気に
対する姿勢として、子供の頃からこうした振る舞いをすりこまれていますから、無
意識のうちにがんに対してもこのような行動をとってしまうことがありえるのです

つづく

総合内科専門医/臨床心理士
飯島 慶郎
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