ある日、我が家のチャイムが鳴りました。
モニターに映し出されたのはお隣さん。

私たち一家が引っ越して来る前から隣に住んでいらして、両親よりも少し年上で、私たち姉妹にとってもお世話になったおばさんです。
お子さんたちは既に独立されていて、ご主人と2人でのんびりと悠々自適な老後生活を送っている方なのですが、よくお惣菜や、近所で取れた野菜や果物を持ってきていただいたり、何か珍しいお土産などを買ったり貰ったりするとおすそ分けをくださったり、何かと良くしてくれていました。

そんなお隣さんがチャイムを鳴らすのはあまり珍しいことではなく、また何かお届け物かおすそ分けかな、と思って出てみると、手に帽子を持っていました。

「これね、お母さんに」
そう言ってにっこり微笑むお隣さん。

私は母を呼んできて、親子でお礼を言いました。

家にあったTシャツをリメイクして、帽子を手作りしてくれたのです。

「Tシャツってほら、汗をよく吸収するでしょう?もうボロのTシャツだからよそ行きようには使えないと思うけど、家の中で被るのにちょうど良いかなと思って。なかなか売っていないし、医療用のやつって高いじゃない?」
お隣さんはそう言ってお手製の帽子を母に渡しました。

実はお隣さんのご主人もがんになって治療した経験があり、母はさっそく色々な情報収集のため、ご夫妻からアドバイスなどをもらっていたのです。

さすが、経験者は違う、と思いました。
たしかに医療用の帽子は高いのです。でも、夏のむれるような季節に被れるような吸汗性も通気性も高い帽子なんて一般的なファッション帽子には無いのです。
だから、このプレゼントはとても嬉しいものでした。

「冬用のやつも作ろうと思ってるから期待して待っててね」
そう言ってお隣さんは「あんまり思いつめないで気楽にね」と言葉を付け足して帰っていきました。

「ありがたいね」
「ほんとうにね、ありがたい」

またひとつ、身近な人の優しさに触れた瞬間でした。

がんの患者会
母と家族のガンとの闘病記

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