前回からの続き

ここまで、がんがあなたに引き起こすであろう「揺さぶり」を和らげるための有用
な資源として、がん相談支援センターにおけるケースワークとピアサポートについ
て紹介してきました。現在、がん患者さんを支える中核となる、がん相談支援セン
ターの数と機能は非常に充実してきています。しかし、がんの患者さんに、これだ
け手厚い支援が届けられるようになったのは、実はほんの最近のことなのです。

筆者が医学生であった約20年前は、やっと日本に緩和医療や疼痛管理、インフォ
ームドコンセント、セカンドオピニオン、QOL(生命の質;生きていくうえでの
快適さのこと)などといった、現在では常識ともいえるような言葉が普及してきた
ころでした。このころはまだ疼痛管理や緩和医療といったがん治療の周辺領域に関
心を持ち、かつ十分なスキルをもった医師は少なかったように思います。

統計によると、この頃の医療用麻薬の消費量は先進諸外国の数分の一以下であった
といいます。つまり医療用麻薬を適切に用いることができる医師が少なく、本来必
要なはずの鎮痛治療が十分に行われていなかったと推測されるのです。当時の日本
のがん医療は「治療」においては充実していたものの、それに比べてがん患者さん
のQOLを高めるような周辺アプローチは、諸外国に比べてないがしろにされてき
たという状況でした。先ほど紹介したような、がんに関する総合的なソーシャルワ
ークやピアサポートがうけられる機会はほとんど用意されていなかったこともその
一例でしょう。

つづく

総合内科専門医/臨床心理士
飯島 慶郎

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